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  Application of Self Propelling Capsule Endoscope (Fin Type) to Dog
Press release on Development of Self Propelling Capsule Endoscope (Fin Type) and
Its In-Vivo Application to a Dog
Team of Prof. N. Ohtsuka, Dept. of Mechanical and Systems Eng., Ryukoku Univ 
          (Prof. N. Ohtsuka is the president and CEO of MU Ltd. presently) 
     Team of Prof. K. Higuchi, Internal Medicine(II), Osaka Medical College
 
 ABSTRACT 
◇Date: July 2, 2009 (Thirsday)
◇Place: Ryukoku University
1.研究開発の背景 
通常使用されている胃カメラや大腸カメラなどチューブ式内視鏡の検査に伴う患者の苦痛を軽減するため、 新しいコンセプトによる検査法としてカプセル内視鏡(CE)がイスラエルのギブンイメージング社(Given Imaging Ltd.)で開発されました。この検査法は錠剤タイプのカプセル内視鏡を飲み込むだけで、内蔵した超小型カメラにより消化管の内部を撮影し、 その映像を体外に無線送信できるので患者の苦痛を伴わず(非侵襲的に)検査診断を行うという画期的な方法です。このカプセル内視鏡は2001年に米国食品医薬局(FDA)で使用が認可された後、わが国では2007年10月に同社のPillCam(直径11 mm, 長さ26 mm)が、 また2008年10月にはオリンパス(Olympus Medical System)社のENDO CAPSULEが保険適用となり、世界中で100万件以上の使用実績があるまでになっています。

しかしこの優れたカプセル内視鏡は自走できず消化管内では食物の場合と同じ蠕動(ぜんどう)運動によって移動するので、任意の位置に移動し任意の方向から観察することができず、診断の信頼性に問題点があります。また、カプセル内視鏡の撮影やデータ送信に消費される 小型電池の能力の制限から全消化管を一度に検査できないなどの問題もあります。

これらの問題を解決するため龍谷大学では、大阪医科大学との共同研究により、磁場の力を利用してジョイスティックで自在に動かすことのできる自走式カプセル内視鏡(SPCE)の開発に成功しました。 また、この有用性を確認するため、両大学の共同実験により、ビーグル犬の胃内でこの自走式マイクロカプセルを自在に動かすとともに、胃内の止血用クリップをカプセル内視鏡のリアルタイム画像を見ながら探し撮影するという生体実験に世界で初めて成功しました。 これらの成果は米国シカゴで開催された権威あるDDW国際会議で本年6月1日に学術発表しました。
2.開発した装置の概要 
自走式カプセル内視鏡に必要な条件として、カプセルを動かすための動力を非接触で供給し、この動きを簡単な方法で遠隔制御できることや、小型軽量化のため構造が簡単であることなどが必要となります。 これらの制約条件を満たす方法として私達が開発した装置は磁力を利用する方法を採用しています。
この装置の概要を写真1に示します。この装置では、波形発生・制御装置により発生した交流電流を大型電磁石に流します。すると、この磁極の間には交流の磁場が発生するので、ここに置いた水槽の中に、 小型磁石とヒレを組み合わせたマイクロマシンを入れると、磁石が振動してヒレを動かし、魚が泳ぐように進むことができます。また制御装置のジョイスティックを動かすことにより交流波形を変化させることができるので、 マイクロマシンが動く速さや方向を自由に変えて運動をコントロールすることができます。このマイクロマシンに既存のカプセル内視鏡を取り付けたものが自走式カプセル内視鏡となります。

生体実験に用いた自走式カプセル内視鏡の直径は14 mm, ヒレを含む長さは48 mm(ヒレを除けば35 mm)ですが、これよりさらに小型で飲みやすいものも開発中です。生体実験に用いた自走式カプセル内視鏡を写真2に示します。 胃内でこの自走式カプセル内視鏡を動かす場合は、予め水を飲んでこの中を泳がせることになります。また自走式カプセル内視鏡の現在位置や姿勢は、カプセル内視鏡が撮影し体外に送信したリアルタイムの画像でモニターできるので、 ジョイスティックを動かして移動させることができます。
写真1
自走式カプセル内視鏡を動かす装置の概要
写真2
自走式カプセル内視鏡
 生体実験の概要:胃 
●ヒトに対する前処置
実験開始2時間前に、ポリエチレングリコール溶液を2000 ml 内服します。さらに自走式カプセル内視鏡(MM1) を内服する直前に、水500mlを内服します。
●自走式カプセル内視鏡の動きを自在にコントロールできることの確認
ヒトがMM1を内服する前に、電磁石に交流電流を流し磁場を発生させることによって水槽内でMM1 が自由自在に動かすことのできることを確認します。また、カプセル内視鏡が撮影した画像を見ながらジョイスティックを動かすことによってカプセル内視鏡が動く速さと進行方向を胃内で自在に遠隔操作できることを確認します。
写真3
生体実験の様子
写真4 
胃内を動いているSPCE
(胃内に挿入したチューブ式内視鏡 により撮影)
写真5
胃内の止血用クリップに近づくSPCE
(胃内に挿入したチューブ式内視鏡により撮影)
写真6
写真5のクリップをSPCE自身が撮影した画像
4.実験結果のまとめ
今後更に検討が必要ですが、 開発した自走式カプセル内視鏡は人体には無害と考えられます。また構造が非常に簡素で安価に作成することができるので、近い将来の臨床応用時に 不可欠となる使い捨て用途に十分対応可能です。この実験ではギブンイメージング社製のカプセル内視鏡PillCam RSBを用いましたが、 装着するソケットの大きさを変えるだけであらゆるカプセル内視鏡に対応することができます。さらに体外から与える磁場によって駆動するので、 駆動時に熱の発生は無く、駆動時間の制限はありません。使用する磁場もMRI検査時に浴びる磁場の強さと比べると格段に弱く、人体に影響を及ぼさないと考えられます。 これらのことから、私たちが開発した自走式カプセル内視鏡は消化管を検査するカプセル内視鏡の駆動方式として理想的なものであるといえます。 近い将来、この自走式カプセル内視鏡にさらに改良を加えることによって全消化管を検査することを目指しています。

(追記)このプロジェクトは大阪医科大学、龍谷大学と弊社との共同研究として継続しています。 また、本実験で使用した自走式カプセル内視鏡SPCEを人体に適用できる改良型はMM1 (Mini Mermaid)およびTM1(Tall Mermaid)と名付けています。
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